世界をつなぐ名曲、「ねこふんじゃった」をめぐる冒険

都内某大学院を出たのち、ライター兼猫(茶トラ♂)の奴隷として働くことに。小学生時代は生き物係、中学以降は生物部と動物全般が好き。動物とのよりよい共生について、思いを馳せる毎日です。記事は猫多めです。

ピアノを習ったことがなくても、「これだけは弾ける!」って曲ありますよね。 そうそうあれです、「ねこふんじゃった」!

小学生の頃、休み時間に音楽室のピアノで弾きませんでしたか。 そんな名曲「ねこふんじゃった」ですが、実は世界共通のものだってご存知ですか?

でも実は大きく違う点もある様子。 今回は猫好きと音楽好きの皆さんに、「ねこふんじゃった」のトリビアをお届けします!

【諸国の「ねこふんじゃった」のタイトルは?】

箸

実は「ねこふんじゃった」が日本独自のものではなく、他の国でも馴染みのある曲です。でもタイトルは全然違うみたい! 海外における「ねこふんじゃった」のタイトルを並べてみましょう。

タイトルに「猫」が含まれるものには、☆をつけてあります。

ねこふんじゃった(日本)☆

ねこのマーチ(ブルガリア)☆

猫の踊り(韓国)☆ 子猫之舞(台湾)☆

黒猫のダンス(ルーマニア)☆

猫のポルカ(フィンランド)☆

犬のワルツ(ロシア)

犬のポルカ(チリ)

蚤(ノミ)のワルツ(ドイツ、ベルギー)

ノミのマーチ(オランダ、ルクセンブルク)

アヒルの子たち(キューバ)

三羽の子アヒル(キューバ)

ロバのマーチ(ハンガリー)

お猿さん(メキシコ)

豚のワルツ(スウェーデン)

トトトの歌(イギリス、アメリカ)

カツレツ(フランス)

チョコレート(スペイン)

公爵夫人(デンマーク)

三女の足(デンマーク)

道化師ポルカ(アルゼンチン)

追い出しポルカ(マジョルカ島)

箸 -Chopsticks-(イギリス、アメリカ、カナダ、ハンガリー)

黒のメロディー(ユーゴスラビア)

サーカスソング(イギリス、アメリカ、カナダ)

泥棒行進曲(中国)

なんとなくお国柄が出ているようにも思いますが、タイトルに「猫」がつくものじゃなくても、動物の名前の入ったタイトルが目立つようですね。

また、ドイツ・ベルギーは「蚤のワルツ」とありますが、蚤は猫につくことが多いことを考えると、もとは猫の意味を含んでいたのかもしれません。「箸」については一本指でも弾けるために、このようなタイトルになっているものと思われます。

【「ねこふんじゃった」の作曲者や作詞者は?】

女性疑問

結論から言うと、「ねこふんじゃった」の作曲者は不明です。

世界中で親しまれている曲ではありますが、その来歴は全く謎に包まれています。

ただ、日本に入ってきたのは比較的最近(少なくても戦後)だと言われいます。 NHKの「みんなのうた」で1966年に紹介され、その時の作詞の担当者であった阪田寛夫氏が作詞家として知られてます。

「ねこふんじゃった ねこふんじゃった ふんづけっちゃたらひっかいた……」というあのお馴染みの歌詞を書いたのが、阪田寛夫氏だったのですね。

しかし、実は、丘灯至夫氏(「高校三年生」などの作詞をした人です)も別の歌詞を書いていました。

「ねこふんじゃった ねこふんじゃった ほらひるねのこねこ……」で始まるこちらの曲は今でこそあまり有名ではありませんね。

でも、もしもこちらが「みんなのうた」で流れていたら、立場は真逆だったかもしれない、と考えるとなんだか不思議な感じがしますね。

ちなみに、世界中の「ねこふんじゃった」でも、歌詞が付けられているのは日本・ドイツ・スウェーデンの三国だけであり、基本的に「ねこふんじゃった」はメロディラインのみの曲だと言えるのです。

【ショック!元は「ねこ死んじゃった」だった!?】

泣く猫

代表的な作詞者である阪田寛夫氏は、以下のように述べています。

(前略)大変短い、一枚のメロディー譜を見せられた。 「これはピアノを最初に練習するとき、まず指の運動をはじめるためのメロディーで『ねこ死んじゃった』というんですヨ、ひとつこれにアトをつけて童謡を作ってみてくれませんか……」という。

つまり、タイトルは通称「ねこ死んじゃった」という。私はその譜面を見ながら「死んじゃった」ではそれで終わり、続かない。「ねこふんじゃった」ならアトが続くけど……と言うと、足羽さんはすぐ納得して「それで作ってみてください」。 それで出来上がったのが現在の「ねこふんじゃった」。 (『ねこふんじゃったの謎』(2007/7/11発売)のライナーノーツより)

なんと! 「ねこふんじゃった」の作詞の話が阪田氏に来た際には、タイトルは「ねこ死んじゃった」だったいうではないですか。

確かに阪田氏の書いた歌詞は「ねこ とんじゃった」「ふわりふわりくもうえ」など、恐ろしいイメージを想起させるのも確かなんです。

この理由はおそらく、坂田氏自身が「ねこ死んじゃった」というタイトルイメージを最初に持っていたからに他ならないでしょう。

でも、実際に「ねこ死んじゃった」というタイトルだったとしたら、ここまで一般に広がったでしょうか? 私のように「ふんじゃっただけでも可哀想」と思う猫好きあふれる昨今では、元のタイトルのままだと、いつの間にか淘汰されていたかもしれませんね。

【最後に――「猫を踏む」という戦後の発想】

「ねこふんじゃった」が日本で定着した理由としては、やはりその難易度の低さ・演奏することのとっつきやすさがあるでしょう。

その割には腕を交差する動きがあるので、「ピアノを弾いている自分」という気分に酔いしれることができるのも大きいと思います。

そして、タイトルに「猫」を取り入れたことにも注目です。 戦後は多くのアメリカ人が日本に流入したことにより、猫よりも犬を飼う文化のほうが勝っていました。そのような中で、犬ではなく猫が踏まれる対象として選ばれたことは、とても興味深いことと思います。

現在は「ネコノミクス」という言葉も出てくるほどになり、猫の飼育頭数は犬をしのぐ勢いとなりました。このような情勢の中では、猫が踏まれる、或いは問答無用で猫が死ぬなどといったモチーフは、まさか生まれないでしょう。

そういった意味では、時代に沿ったタイトルのネーミングだったと言えそうですね。 とは言え、「ねこふんじゃった」の弾むようなメロディラインそのものが私達の心を捉えてきたのも事実。

作曲者は不明でも、世界共通で楽しめる名曲。 それだけでも、海外の人との橋渡しになってくれそうな素敵なことではありませんか。

(※今回の記事の考察部分は筆者によるものですが、「ねこふんじゃった」の知識及び事実関係などは、キングレコード株式会社『ねこふんじゃったの謎』(2007/7/11発売)のライナーノーツを大いに参考にしています。 また、そのCDにも関わっていらっしゃる、宮本ルミ子さま運営のサイト、『ねこふんじゃった資料室』も適宜参照いたしました。この場を借りてお礼申し上げます)

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