それでも獣医になりたいか

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

突然タイトルの雰囲気がガラリと変わっていますが、前回の続き、獣医学部に入学してからの話です。

なかなか教室に辿り着けない

獣医学部に入ろうとしている方は都会のオシャレ生活を目指している方は極めて少ないかと思うのですが、大体は大学がのどかな場所にあったり、または獣医学部だけが人里離れた場所に存在している事が多いです。学内には無数の畑が広がり、下宿先から大学の入り口まで着いてひと安心したら、そこから学舎までの距離の方が長かったりして痛い目に遭った、と言うのはお約束。自転車を手に入れて通学するも風の強い日に道に沿って走る大きな溝に自転車ごと落下したり、北国であれば冬はスパイク付きの自転車・・に乗る勇気が無いので歩いて通うと大雪の日に埋まって後から来た友人に救出される・・漫画ではなく現実の話です。特に雪の多い地方では実習や実験などで夜遅くなり帰ろうとしたら辺り一面雪砂漠と化して帰り道が無くなるなんてことはざら。どうにかこうにか帰ると団地の『雪かき当番』が回ってきており疲弊した体にムチ打ってせっせと雪かき。こうしてみんな鍛え上げられてゆくのだ、と思わずにはいられない出来事ばかりでした。ホントだよ!!

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想像以上に辛いこともある

獣医師志望の方の多くが動物好きだと思います。動物の命を助けたいと獣医師を志したのに、動物実験などで命を奪う側に回らないといけない時があります。私がその事実を知ったのは浪人していた頃でした。どうしよう・・と思いながらも、中に入ってみない事にはわからない、と志望を変えることは無かったのですが。でも、生体ですると思っていた外科の実習は私たちの頃は代替法になっていました。色々な考え方はあると思うのですが、心の底からホッとしてしまったのを覚えています・・。それでもラットなどの小動物に手をかけなければならない実習はあり、そういう日々が積み重なった頃は同じように悩む友人と泣きながら電話した日もありました。その時々で色々な事を考えるのですが、答えはなかなか出ません、いやむしろ思考を停止させていたかもしれません。私としては動物の好きな人に悲しい思いをしてもらいたくないと思う反面、こういった事を悲しいことだと思える人に獣医になってもらいたいというジレンマがあります。

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動物病院で働く獣医師だけが獣医師ではない

『獣医さん』というと動物病院で働いている姿が容易に思い浮かぶと思いますが、卒業後実際に動物病院で働くのは全体の約半数。産業動物の診療に携わる人もいれば製薬会社で勤務する人もあり、公務員もメジャーです。食中毒が起こらないように監視したり、最近話題になっているエボラ出血熱などの感染症が国内に入ってこないように監視したりする仕事もあります。

先ほどの話の延長ですが就職した後も動物の命を奪わなければならない場合があります。無責任に捨てられた犬猫に新しい行き場が無ければどうなるか、ご存知の通りです。保健所でなくても動物病院で安楽死を頼まれるかもしれません。需要がある限り誰かがそれをしているのであり、その誰かは獣医師なのです。

体力と精神力を要する

獣医師として働き出してから学生時代にやっておいて良かったと感じたのは、『ストレス耐性を付ける』ということでした。入学してすぐ受けた適性テストか何かで自分のストレス耐性が限りなくゼロに近いという事実が発覚してしまい、こりゃイカンとあえてハードなサークルに身を寄せたりしました。その甲斐あって勤務時間が毎日13-15時間の生活で院内でインフルエンザが流行っても無事、親知らずが生えてきて40度の高熱が出ても(気づかず?)出勤、という驚異の生命力が開花。このように非常にハードな職場も多いので、体力や忍耐力(や免疫力)を培って欲しいです。(ストレスが多いのは勤務獣医師だけではないと思いますが。)

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いろいろネガティブ要素も書きましたが・・私個人としては、獣医師は辛い課程がありながらも夢のある職業であると思っているのですが、どうでしょうか?大きな夢を持って入学してから、様々な現実の中でその夢を維持したり形をどう変えていったりするかが、この道を選んで良かったと思えるかどうかのキーポイントになる気がしてなりません。全く偉そうな事を言えた口では無いのですが、獣医師を志している方はご自分の目で学内や学外でたくさんの現実を見ていただきたいなと思うのでした。

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