肥満やアレルギーも?知られざる抗菌薬の副作用

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

細菌・・ではなく最近ニュースばかりをチェックしていますが、今回も抗菌薬の副作用の記事についてです。他人事では無いなと感じたので、抜粋してご紹介しようと思います。

元記事 Antibiotic use has more unwanted effects than previously thought

<備考>
抗生物質・・他の微生物の増殖を抑える、カビや細菌から取り出すことのできる物質の総称で、青カビが出すペニシリンによってブドウ球菌の増殖が阻止されるを発見し抗生物質が「誕生」した話が有名
抗生剤、抗菌剤、抗菌薬・・抗生物質から人工的に作り出された菌を抑える薬
ということでここでは“抗菌薬”という用語を使っています。

下痢や嘔吐以外にも・・これまで考えられていたよりも深刻な副作用の可能性

“抗菌薬の使用の副作用のひとつが消化管の善玉菌を破壊することはよく知られている。”

“抗菌薬は広く使用されていて、大人の約40%そして子供の約70%が1年あたり少なくとも1回は摂取し、数十億の動物に処方されている。”

“正しく使用すれば抗菌薬は命を脅かす感染症から身を守るが、約10人に1人が逆に副作用に苦しむような扱い方をしている。”

“科学者たちは抗菌薬の使用が(特に過剰使用において)、とりわけ糖代謝、免疫機構、食物の消化、行動に変化を引き起こす様々な問題に関連することに気付き始めている。また、抗菌薬の使用が肥満やストレスにもつながると疑っている。”

fat cat and pudgy pooch

実験動物によく使用される抗菌薬の影響を調べてみると・・

“これまで、抗菌薬は消化管内の腸内細菌と一部の免疫機能のみを障害すると考えられてきた。しかし今回の新たな研究で、抗菌薬がさらに腸管上皮細胞も破壊することが分かった。”

腸管上皮細胞は特殊な細胞が細かいひだ状の層になっていて表面積を大きくし、水分やグルコースや必須栄養素を吸収し血液に取り入れる役割をしています。また、体と消化管内の膨大な数の細菌とのバリアーとなっています。さらには宿主の体と細菌との恒常性の維持のために絶え間なく頑張っている大量の免疫細胞の本拠地でもあります。(記事引用)

腸管上皮細胞が破壊されれば少なからず体に良くない影響がひとつやふたつ出てきてもおかしくないですね。

抗菌薬が体と細菌とのコミュニケーションに必要な遺伝子に影響を及ぼす

“体と細菌のコミュニケーションシステムのバランスが崩れると、一見抗菌薬とは無関係に見える一連の問題を引き起こす可能性がある。”

“下痢や潰瘍性大腸炎を引き起こす消化器官の障害だけではなく、免疫機能、肥満、食物の吸収、抑鬱、敗血症、喘息やアレルギーにもつながる可能性がある。”

ミトコンドリアも壊してしまう

“研究チームはまた、抗菌薬と抗菌薬に耐性を示すようになってきた細菌がミトコンドリアに著しい変化を引き起こし、細胞を死に至らしめることを発見した。”

ミトコンドリアは細胞内のバッテリーのようなもの。細胞のエネルギーを作り出したり、細胞の伝達や成長において重要な役割をし、良好な健康状態のためには適正に機能する必要があります。(記事引用)それが壊れるとなると、問題ですね。
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最後にMorgun教授は善玉菌を増やすことを提案しており、善玉菌が好ましくない菌に打ち勝つ事がより良いアプローチ方法である可能性を示しています。

抗菌薬に「お世話になる」機会を減らす努力を

堅苦しい文章になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?今回はマウスで確認されたことですが、MRSAや多剤耐性菌の問題がよく話題になる抗菌薬の使用・・加えてここまで色々な副作用が心配されると気軽に使用できる(すべき)ものではないと考えさせられます。

抗菌薬が治療に必要なケースは多々ありますが、猫の特発性膀胱炎など、抗菌薬を使わなくても治ってしまう病気も中にはありますので、「自然治癒に任せる勇気」も一応持参して、かかりつけの獣医さんとよく相談されてくださいね。(逆に、必要があって処方されたのに飲ませない、相談なしに自己判断で調節してしまう、ということは避けましょう・・!)

免疫力アップを心掛ける、再診の機会を逃してズルズルと薬だけもらいに行ったりしない、とりあえず何か薬を処方してもらうことで安心してしまわない・・など、今一度ご確認ください。

(私も気を付けます。)

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