もうすぐ3年目、信夫のリンパ腫 ごはん+α編

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

岡本さんが続けている食事療法

ポイントは低炭水化物、高たんぱく、脂質も重要

リンパ腫に限らず、がんと闘うために知っておくべきがん(腫瘍)の性質がある。それは

“グルコース(ぶどう糖)が大好き”
“筋肉(たんぱく質)や脂肪が消耗されていく”

というものである。

がんはグルコースをもとに増殖し、グルコースは炭水化物からも分解されて生成されるので、炭水化物自体を控えめにすることが好ましいとされています。がんがあると体の免疫系ががんと闘うために自身の体から、またはがん自身から特定のサイトカインと呼ばれる情報伝達物質が放出されて、それが筋肉(たんぱく質)を分解する酵素を働かせてしまいます。食欲が落ちた場合やエネルギー要求量が増えた時に体重が落ちるのは脂肪が減るためですが、がんでは脂質と同時に体のたんぱく質量も減っていきます。

『ごはんは炭水化物をかなり減らして高たんぱく食を食べさせて。牛、鶏、ウサギ、鹿、羊、魚、とにかく色々なもの食べさせて。かなり元気のない時は、信用できる人から譲ってもらった生のお肉あげてた。生肉をあげるときはかなり注意をしていたけれど。』

もちろん、たんぱく質だけあげていれば良いというものではなく、最低限体に必要な栄養素は他の食材から取り入れる必要がある。岡本さんは生野菜やキノコ類もあげたりしていたそうだ。

『最初は手作りごはんを凝ってあげていたけれど、今はドッグフードに頼ってる。笑』

良いお値段はするが、化学的添加物や保存料などを使用していない、肉をメインとして作られたフードを選んで与えているとのこと。がん用の療法食を利用していたことも。手作り食が自分に出来るかどうか、不安を覚えてしまわれた方にも朗報である。他にもAHCCと呼ばれるキノコを原料とした健康食品を時々与えているという。

がんの治療における食事に対する考え方は動物病院や獣医師によってそれぞれ違ってきます。療法食は好まない子もいますし、手作り食は栄養が極端に偏る場合があり、生肉は嗜好性も高いですが時に食中毒の原因になったりすることもあるので注意は必要です。状態が悪く食欲が落ちている場合は好きなもの(食べてくれるもの)をあげた方が良いですが、もしも余裕があれば食事の内容を意識してみるとQOLの向上に繋がるかもしれません。

犬は自分が”がん”になったことを気付かないけれど、家族の様子から何かを感じ取る

『あまり神経質にならず、甘やかさず。抗がん剤治療中でも同じ。』

どうぶつ達は自分ががんを宣告されたとしても、自分ががんを患ったとはわからない。だが、そのオーナーが抱える不安などは敏感に察知してしまうことがある。長い間良い関係を築いてきているなら尚更のこと。そこでオーナーが毅然とした態度を取ることで、どうぶつ達の負担を軽くしてあげることができるのだと思う。いつも元気な岡本さんが、きっと信夫にも元気を与えているに違いない。

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体重は落ちてきたものの、毎日機嫌よく過ごす信夫(写真提供 岡本薫さん)

再発から1年以上経過した頃に別件で受診した際、腫瘤の大きさを確認すると、再発時の4センチから変化は無かった。

今回信夫が患ったのは胸腺リンパ腫。このリンパ腫は、犬において腫瘍の悪性度は高いものの症状の進行はそこまで早くはないものがある。どれだけ頑張っても進行の早いリンパ腫もあるし、ここ数年で分かってきた、悪性度が低くすぐに治療をする必要のないリンパ腫も存在する。勿論、低悪性度だからと言って放っておいていいものでもない。こればかりはケースバイケースで、診断に基づき、その子にあった治療を動物病院と相談しながら進める必要がある。今回の岡本さんと同じことをしたからといって同じ結果にはつながらないかもしれない。しかし、こうして何年も頑張れるケースもあるのだと、ひとつの希望として知ってもらえたら、信夫も岡本さんも嬉しいと思う。

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