《音》が猫にもたらす効果

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

自然界でも、人間が作り出したものでも、世の中は音にあふれています。ここ最近、ネコと音に関する新たな調査結果が発表されていて、大変興味深かった2つをまとめてみました。

〝甲高い音〟が老ネコの発作を引き起こす?

どうも世界各国、巷ではある特定の高音(甲高い音)が愛猫に発作を引き起こしているようにみえる・・との相談事がチラホラと挙がっていたようです。慈善団体のインターナショナル・キャットケアが時折受けるこの相談事について獣医神経学の専門家に尋ねたところ、そういった事象については立証されておらず、はたまたほとんど認知されていないとの答えが返ってきました。

これはいかん・・!とインターナショナル・キャットケアの協力のもと調査に乗り出した研究チームはそういった高音がネコに発作を引き起こしうる事実を突き止め、FARS(猫科動物聴覚原性反射発作)と名付けました。

特定の高音がきっかけとなり、痙攣を起こしたり体が硬直したり意識を失ったりするFARSは、平均して15歳のネコにみられ、その範囲は10歳から19歳に分布していたとのこと。純血種、雑種両方にみられ、純血種ではバーマン種に多かったとか。

その〝甲高い音〟を何とか避けることが現状の対策として挙げられていますが、どのような音が発作の引き金になっていたかというと、症例が多かった順に

・アルミホイルをカサカサ
・食器をスプーンでカンカン
・ガラスをコツコツ
・紙袋やビニール袋をカサカサ
・キーボードやマウスをカチカチ
・小銭や鍵をチャリチャリ
・ハンマーで釘をかんかん
・舌打ち!

少数派には流水音や携帯電話の音なども・・。どうでしょう・・何とか気を鎮められれば辞めることのできるもの(舌打ち)からなかなか神経をつかわないと難しそうなものまでありますね。現在有効な薬なども解ってきており、調査も続行中ということで、FARSに悩むネコたちやその家族の新しい助け舟になってくれそうです。発作を起こす子は、〝甲高い音〟がきっかけになっていないか、確認してみる価値はありそうですね。

手術中のクラシック音楽でネコにリラックス効果

もうひとつは、人においても様々な効果がみられる音楽について・・牛などにクラシック音楽を聴かせリラックスさせるという話も耳にしたことがあるかと思いますが、手術中ネコにクラシック音楽を聴かせるとリラックスした状態になるという話。

ポルトガルの獣医師が獣医療センターで手術中に音楽をかけていたところ、音楽のジャンルによってネコの反応が異なることに気付いたことがこの研究の発端となっています。研究では12匹の雌猫の避妊手術中、ネコたちにヘッドホンを装着。音楽を何も流さない時間、クラシック音楽を流す時間、ポップやヘビメタを流す時間・・をそれぞれランダムに2分間ずつ作り、その時のネコたちの呼吸数や瞳孔径を記録していきました。するとクラシック音楽をかけたときにネコたちは最もリラックスした状態になり、ヘビメタでその逆、ポップはその中間だったそうです。

音楽を効果的に使うことによって麻酔薬の使用量を減らすことが出来るのでは?という期待も高まっています。小動物の手術と言えばどうしても全身麻酔になってしまいますから、クラシック音楽で薬の量もリスクも減るのであれば万々歳。麻酔の効きにくい子に薬の追加ではなくヘッドフォンの追加、という時代はすぐそこかもしれません。中には大好きなヘビメタをバックミュージックに気分を上げて手術に挑む先生もおられるかもしれませんが、こうなってくるとクラシック志向に転換せざるを得ないかも・・。

ネコはとても聴覚の優れた生き物。音による影響の新しい情報がまた出てきそうです。

参照 High-pitched sounds can cause seizures in old cats
Classical music helped cats relax during surgery

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