ケニヤから、ゾウと平和を考える

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

突然ですが、動物が好きな人なら一度は行ってみたいと思う土地・・アフリカの広大なサバンナは誰もが候補のひとつに挙げるのではないでしょうか。中には将来アフリカで働きたいと考えている方もおられるかもしれませんね。

実際にそのアフリカのケニヤで、野生のアフリカゾウの研究をしている方の講演会が先日あったので、今回はその事について書きたいと思います。

講演は、アフリカゾウ国際保護基金(AEF-I)客員研究員、酪農学園大学特任教授の中村千秋さんによるもの。中村千秋さんは、その活動から中曽根康弘賞を授賞されたりあの情熱大陸に出演されるなど、まさに情熱の塊のようなお方です。アフリカゾウの研究だけでなく、地域に住む女性たちの自立を促してきたりと色々な活動をされています。

貴重なお話を聴けるとあって、血湧き肉躍る心持ちで会場に入ったものの、如何せん子連れだったため息子が奇声を発すれば周りに気を遣って退場・・落ち着いたらまた入室・・また奇声により退場・・の繰り返し。ふと終わってみればメモが断片的すぎてぱっと見何のことやら(しかも恐ろしく汚ない)ですが、このメモをひとつづつ読み解いていきましょう。

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①1989 アフリカゾウ国際保護基金

まずこの1989から。1989年はワシントン条約で象牙の国際商業取引が禁止された年です。密猟が70年代後半に増加したために国際商業取引が禁止されて、密猟に歯止めをかけようとしたのです。その年にペレツ・オリンド元ケニア国立公園庁長官そして中村千秋さんの恩師にあたる小原秀雄女子栄養大学教授(現名誉教授)らが中心となってアフリカゾウ国際保護基金(AFE-I)が設立されます。そこへ派遣されたのが、他でもない、ずっとアフリカへ行く機会を伺っていた中村千秋さんでした。

さて密猟の話ですが、ゾウの密猟で思い浮かべるものとは、何でしょう?そう、象牙ですね!そして象牙で連想するものといえば、ハンコ、です。私もハンコ好きですが、日本は未だに象牙消費大国の1つです。需要があるから供給があるのであって、もしかして私たちが象牙のハンコを使わなければ密猟も減るのでは?という話になってきてしまいます・・。近いところのデータでは、2010年〜2012年の間に象牙目的で密猟されたゾウの数が毎年平均3万3千頭に上るとか。密猟、ダメだよ!私も息子のハンコに象牙を使うのをやめました。(高いからじゃないですよ。)

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②アフリカゾウ 高い適応力〜

アフリカゾウは私たちと似ているところが沢山あります。環境に対する高い適応力、家族単位で暮らすところ(ただし女系)、死者を悼むところ・・など。子供の頃からゾウさん大好きになる人が多いのは、実はこのような共通点を知らず知らずのうちに感じ取っているからなのかもしれませんね。そう言えば、キリンさんよりゾウさんの方がもっと好きですっていう子もいましたよね。

オスのゾウは30才〜40才が魅力的・・・野生のアフリカゾウの寿命は約70年なので、アフリカゾウの場合もちょうど脂の乗ってくる時期なのでしょうか。

そして、各地域の生態系には keystone species という健全な生態系を維持するのに特に重要な種があり、中村千秋さんがフィールドとしているツァボの生態系ではアフリカゾウがこれに当たります。ゾウは森を拓いて他の動物に生活の場を提供したり、草木がほぼ未消化のゾウのフンは他の生物に食料や住処をお裾分け。マイグレーションと呼ばれる季節的な大移動によってそのフンも大移動するわけですから、広大な規模で他の生命の維持に繋がっています。このマイグレーション、何だかまるで畑を耕しているかのようですね。

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ツァボは土が赤いのでツァボのアフリカゾウも赤い

③地域住民とアフリカゾウ

残念ながら私のメモはゾウのウンコ、生態。で終わってしまっていますが、大事な話がもうひとつ。生態系の中で重要な役割をするアフリカゾウですが、ヒトからすれば畑を荒らしたり事故の元になる脅威でしかなく、生息場所の重なる地域では軋轢が起こっていました。

野生動物の保護とはそこに暮らすヒトの安全や生活の保障ありきのものでなければ結構ただのひどい話になってしまいます。アフリカゾウ大事やし、そこに住む者たちよ、大人しく被害にあっておけー。なんて、とんでもないですよね。

でも、もし自分たちがある程度ゾウと接触することなく暮らす環境が整って、さらにゾウが生態系の維持においてどのような役割を担っているかを知って、それが大切なことで、結局は巡り巡って自分たちに還ってくるとわかれば、それではなんとか折り合いをつけましょうかね、という気持ちになります。そういったヒト側の環境や意識を変えていくことがゾウや生態系の保護には不可欠なのです。

地域の子どもたちにも教育エコツアーなどが行われて、ゾウはただ怖い・邪魔だという意識だったのが大切で共存したいというものへ変わっていったそうです。子どもは自分の体験を家族に話すので、家族の意識も変わっていくという好循環っぷり。情報の提供やそれを知る場所というのは本当に大事だなあとしみじみしてしまいます。

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アフリカゾウとの共存を選択したビリカニの女性たち(オシャレ!)

ここに書いた事は中村千秋さんんの活動や情報のほんの一部で、もう少し詳しく知りたい方は HP:野生のアフリカゾウと地域住民の共存〜野生動物と人間の未来を考える〜 を見ていただくか、ケニヤでのエコツアーも定期的に行われているので参加されてみてもいいかもしれません。(実はかくいう私も学生の頃せっせと夜勤のアルバイトをして行って来たんですけどね・・!)

私たちは家族として一緒に暮らす動物もとても大切ですが、まわりにいる野生動物の生活も尊重することで、結局は自分たちが住み良い環境を維持するのに繋がったり、生活の場が違う他者を思いやったりする心に繋がるのではないかなあと、ふとした時に思います。そしてスケールの大きなアフリカゾウの生活を思い浮かべると、どうしようもなくわくわくしてしまいます。疲れた時にはアフリカの広大なサバンナで暮らす動物たちの事を考えるのも良いかもしれません。

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