悪意のない誘拐を防ぐために、知っておきたい巣立ちのこと

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

動物好きな方なら、木々を移り行く野鳥に目を奪われたり、その小さな姿に安らぎを覚えたりすることも多いかと思います。そんな野鳥が、しかも幼気なヒナが、ある日地面にうずくまっているのを見つけたら・・何とかせねば!!優しい心に火がついて、駆け寄って、保護をする。でも場合によっては、これが結果的に誘拐になってしまうこともあります。この季節、是非ご一読を。

善意で保護したのに、誘拐ってどういうこと?

これから夏にかけて、巣立ちをして独り立ちのための練習を始める野鳥のヒナが増えて来ます。ひとりでエサを取って、外敵などの危険から身を守りながら生きて行くための訓練を、親と一緒に1週間から1ヶ月ほどの短い期間で行っていきます。そのとき、まだ上手く飛べずに地面近くでウロウロしたり、時にはじっとしていることがあります。その様子を見て、心配になりすぐに保護をしてしまうというパターンが多いのですが、だいたいは近くに親がいて見守っています。人間が善意で行動に移した事でも、親からすれば目の前で突然我が子が連れ去られてしまったという悲劇になるのです。

保護をしていいのはどんなとき?

保護をしていいのは、明らかにケガをしていたり、弱ったりしている場合です。おぼつかない様子でも、自分でしっかり立ったりできるようであれば先に述べたような訓練中の可能性が高いです。人間が近くにいると親が警戒して出て来られないので、見守るにしてもその場から離れてみましょう。ネコが近くにいて心配だからといって保護するのもNGです。どうしてもという場合は、近くの木に止まらせるなどして対処しましょう。また、まだ羽がはえ揃っていないような(ツルリとした地肌にストローのような羽が生えている状態の)ヒナが落ちている場合は、巣立つ前に巣から落ちてしまった可能性があるので、近くに巣がないか確認して、巣があればそこに戻しましょう。

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仕方なく保護した野鳥は家で育ててもいい?

野鳥は法律で、許可なく飼育することができないように決まっています。保護した場合は、都道府県の窓口や指定の動物病院に相談するようにしましょう。野鳥はあくまで野生動物で、様々な病原体を持っている可能性もあります。そういった意味でもむやみに距離を近づけることは控えた方が良いと思います。

小さい生き物を愛おしいと思う気持ちはとても素敵です。でも、ペットではなくあくまで野生生物の彼らとは少し距離をおいて、彼らの生き方を尊重するのが、命へのひとつの愛情の形だと考えるのでした。

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