【その1】熱中症はなぜ危険か

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

春も過ぎ、夏に向けて良い季節になってきましたね。サンサンと輝く太陽を見ると、シミやソバカスのことはとりあえず置いておいて、外に出たい気分がむくむく。そしてこの時期、道ばたに生えている山菜以上に気になってくるのがやはり熱中症です。

周りの熱に対して自分自身の熱を十分処理できなくて起こってしまう熱中症ですが、十分に気温が上がる前でも湿度が高かったり運動量が多ければなってしまう可能性があります。夏を待ちきれないのはTUBEだけではなく、熱中症も同じです。

熱中症(軽〜中程度であれば熱性疲労、重度であれば熱射病)の地理的分布を手持ちのテキストで参照してみると、

 “おそらくどんな風土でも起こるが、温暖な、あるいは湿気のある環境が一般的。”

と、日本の梅雨〜夏にどんぴしゃりであります。

ご自身も注意が必要ですが、一緒に出かける、もしくはお家で留守番の動物たちのケアも怠りなきよう、気を付けたいところです。

 動物にとって熱中症が怖い理由

突然ですが、みなさまはお家のワンニャンたちがウチワで自分を扇ぎながら汗をダラダラかいている姿をご覧になったことはありますか?

色んな意味で、そのような姿を目にしたことは無いと思います。そう、彼らは全身で汗をかかないのです。私たちはある程度の暑さであれば、風をおこせば汗の蒸発とともに体温を少なからず下げる事が出来ます。しかし彼らが同じように出来るとしたら、あの可愛らしい肉球からか、ペロリとだした舌からの蒸発でのみ。人が何とか扇風機で耐えられたとしても、彼らは同じようにいきません。

そして、ハイハイまたはホフクゼンシンで外を散歩されたことはありますか?私は雷が鳴った時に思わず地面にうつ伏せになったことがありますが、それはそれは蒸しっとしておりました。特にアスファルトの道ですと、地面の近くを歩いている四つ足の動物は私たちが感じている以上にずっと熱気にさらされた状態になってしまいます。

さらに、お家の子はその愛らしい毛むくじゃらの姿の背中にチャックが付いていて、その毛皮を脱ぎ捨てることができるでしょうか?(漫画でなら見た事ありますが!)

・・このように、ヒトとはまた少し違う要因で、動物たちが熱中症にかかるリスクは高くなっています。

これに加え、

・  短頭種である ※1

・  肥満である ※1

・  心疾患や呼吸器疾患などがある ※1

・  極端に若齢または高齢

※1 犬はパンティングをすることによって体の熱を外に逃がすということをするので、呼吸がスムーズにいかないような問題がある場合には特に注意が必要です

といった事が当てはまれば、要注意中の要注意です。家庭で私たちと一緒に暮らしているペットというのは、もともと日本以外の気候で生活していたものも多く、特に湿度が高い状態というのはなかなか危険です。

熱中症になった時の症状は

熱中症になった時の症状は、軽度〜中程度の“熱性疲労”の状態であれば、

 

・  無気力である(声をかけても反応に乏しい)

・  明らかに弱っている

・  嘔吐や下痢

・  パンティングがひどい

 

重度の“熱射病”の状態になると中枢神経まで侵されてしまうので、

 

・  沈鬱になる

・  目が見えていない様子

・  運動失調

・  目が回っている

・  動けない、起き上がれない

・  発作(痙攣)が起きる

・  昏睡状態になる

 

さらに、

 

・  血を吐く

・  点状出血が出る(DIC※

・  ショック状態

・  不整脈

※播種性血管内凝固・・この場合過度の脱水や血管内皮の損傷などにより体の血管のあちこちに血栓ができ、血栓が出来すぎて材料が枯渇したり血栓を溶かそうとする機序が働いて出血傾向になり、体表に点状の出血(紫斑)となって表れます。かなり危険な状態です。

といった症状が出て来ます。このような状態までなるとかなり重篤で、命の危険性が十分あります。

熱中症になると体温が42℃以上になることもありますが、そうなると体温調節をする中枢がやられてしまって余計に体温が調節できなくなるという悪循環に陥ってしまいます。さらに体は普段の体温周辺で上手く機能する構造や仕組みになっているので、ここまで体温が高い状態が続くと(特に42.7℃以上で)全身の臓器の機能障害を引き起こすことにもつながってしまいます。

 

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