犬や猫における生肉食の実際・・?

獣医師。酪農学園大学獣医学部卒業後、神戸の動物病院で4年ほど勤務し、命の重みを毎日痛感。結婚後移住した北海道の町には小動物の病院がひとつも無いという、このご時世大変びっくりな展開を経験する。現在新種の生物(息子)と格闘しながら、将来臨床への復帰を目指して再勉強中です。地域の子供達と動物の健全で安全な触れ合いの時間を作ることが、学生の頃からの密かな目標。・・ただの動物好きなので、いろいろな動物に関することを幅広く書いていきたいと思います。

最近はお家の犬や猫に手作り食を与えている、または手作り食に興味を持っている方も増えて来ているのではないでしょうか。犬も猫も祖先は野生下で生肉を食べていた動物なので、とりわけ生肉への関心は高いのではないかと思うのですが、それに関してMNT(Medical News Today)というサイトでこのような記事を見つけました。

http://www.medicalnewstoday.com/articles/270802.php

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結論からざっくり言うと、生肉を含む食餌はペットを病気にするかもね?という内容なのですが、これには“自然食”を支持するユーザーから“Do your homework!!(憤り)うちの子は生肉食であんな症状やこんな症状が改善したのよ!”“獣医師はフード会社に魂を売っているのよ!(意訳)”などのコメントも寄せられ、若干荒れている印象・・。フードにこだわりを持つことが、うちの子への愛情のステータス、という傾向がある今日この頃ですが、元となった文献も少し参照しながら内容を抜き出してみようと思います。

アメリカの獣医師が生肉を含む食餌を推奨しない2つの理由

※生肉を含む食餌・・RMBDs(Raw meat-based diets) 家畜や野生の食用動物の骨格筋、内蔵、骨(ほ乳類、魚、家禽)、低温殺菌処理されていない牛乳、生卵

1. 栄養的アンバランス

“少なくとも2つの文献が栄養不足または栄養過多の高いリスクがあることを示している(生肉を含まない他の手作り食と同様に)”

“犬や猫の祖先は生肉を食べていたが、最近の研究では犬の家畜化における早い段階で狼と犬の消化におけるいくつかの重要な変化が起きていると示している。”

“また、野生の狼は大抵数年しか生きず、長く健康に生きる事を望むペットには最適でない食餌を食べている”

2.安全性

“生肉はサルモネラ、大腸菌、クロストリジウムを含む様々な病原体に特に汚染され得る(それらが与えられた動物や他の動物、人の家族、そしてその動物と接触のある人々に健康上のリスクを引き起こす)”

“ある調査では、48%に至るテストした市販の生肉食はサルモネラに汚染されており、一方で手作り生肉食の汚染率はわからないが、別の調査では生の鶏肉を用いた手作り食の10中8食が細菌に汚染されていたとわかった”

“生肉食のサンプルの16%はリステリアに汚染されていたとわかった”

“生肉食の支持者が汚染された食べ物から動物は病気にならないだろうと主張する一方で、それらの病原体に起因する動物の病気や死までもを記録しているいくつかの学術論文がある”

“レシピに骨が含まれていると(生、加熱済みに関わらず)、歯が折れたり、消化管の閉塞や選考のような他の健康上のリスクを起こし得る”

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生肉を含む食餌のメリットとされるもの

“酵素が熱処理で失活しないため食物の消化率の改善がみられたという報告がある(が、何らかの健康の利益になるかどうか、現時点では何も証明されていない)”

“市販の生肉食を食べている犬の腎臓におけるカルシウムの排泄が市販のドライフードを食べている犬に比べて少なく、これはシュウ酸カルシウム尿石症になりがちな犬における利点である(この生肉食がドライフードに比べてカルシウム含有量半分、ソディウム1/3以下、水分量大幅に多いからか)”

他、生肉食支持者の主張

“タンパク質の消化、アミノ酸の生体利用率UP”

“被毛、皮膚の改善”

“口、体、排泄物の臭いの軽減”

“活力、行動、免疫力の改善”

“アレルギー、関節炎、膵炎、歯疾患、寄生虫病の病態の軽減”

これらの効果は科学的に示すことの出来るデータが揃っておらず、さらなる長期的な調査を必要とするところだそうです。

個人的にまとめ

堅苦しい言葉を陳列してしまいましたが、要は生肉食の利益を裏付けるデータが十分でなく、時として致命的な病気のリスクがある以上おすすめはできませんよーという事を言っているようです。

でも、どうしても色々試したのにドライフードを食べなかったり、病気になった時に処方食を食べられなかったり、ずるずる続く慢性疾患の一発逆転を狙って手作りフードに挑戦する、ということが悪い事だとは思いません。そしてそれを楽しんで食べられるなら、動物たちも幸せですしね。

ただ、その効果は絶対でなくて、こういったリスクも十分にあるんだよということ(加熱していない生食を与えると最悪命に関わる事もあること、公衆衛生上の問題に発展する可能性もあることなど)を知っておく事は必要だと思います。もちろん、その動物にとって食べると危険な物も、十分調査してくださいね。

(それにしても、私が小さい頃(ウン十年前)は“犬や猫にみそ汁ごはん”がまかり通る時代だったのが、今思うと逆にすごいです。)

翻訳原本:Risks outweigh benefits of raw meat-based diets for pets

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